「生産性を上げる」とは何か

はじめに

「生産性を上げる」

ビジネスパーソンであれば、おそらく誰もが聞いた事のある言葉ではないでしょうか。職場で毎日のように上司から「生産性を上げろ」と言われた経験があるという人も少なくないかもしれません。

では、この「生産性を上げる」とはつまり何を指すのでしょうか?

若手のビジネスパーソンに「仕事で重要な事は何だと思う?」と聞いてみると、「生産性を上げる事です」と自信を持って回答される事が多いのですが、そのまま「生産性を上げるって具体的にどういう事?」と聞いてみると、意外なほど歯切れが悪くなってしまいます。

聞きなれた言葉でありながら、この質問を真正面からされると実際上手く回答できないという人も多いのではないでしょうか。

今回は、この「生産性を上げる」とは何を指すのかという事について書いて行きたいと思います。

「生産性を上げる」とはつまり何か

「生産性を上げる」とは何を指すのでしょうか?

ビジネスパーソンにおける生産性は以下の式で定義されます。

生産性=生み出した付加価値(Output)/費やした労働量(Input)

つまり、生産性を上げるとは、「無駄な仕事をせずに、価値のある仕事に注力して成果を生み出す事」になります。インプットとなるリソース(ビジネスパーソンであれば時間)は当然限られているので、その中でどれだけ価値のある仕事が出来るかが重要になります。

そして、生産性に関する最も本質的な問いは、この「価値のある仕事とは何か」という事です。当然ですが、価値のある仕事をするためには、仕事の価値が何によって決まるのかという事を正しく理解しておく必要があります。

価値のある仕事とは何か

それでは仕事の価値は何によって決まるのでしょうか。この問いに対する素晴らしい回答が知的生産における名著「イシューからはじめよ」で示されています。

価値のある仕事とはすなわち、「イシュー度が高く」「解の質が高いもの」になります。

そしてポイントとなるのはこの「イシュー度の高さ」です。イシュー度の低い問題、つまり、どうでも良い問題にどれだけ賢明に取組み、その解の質がどれだけ高かったとしても、その仕事は価値を生み出しません。価値のある仕事をするためには、今解くべき最も本質的かつ重要な課題、「イシュー度の高い問題」を見極める力が重要になります。

圧倒的に生産性の高いビジネスパーソン、価値のある仕事をする人というのは、ひとつのことをやるスピードが人より10倍, 20倍と速いわけではなく、解の質が高いのはもちろんの事、イシュー度の高い問題を見極めて取り組んでいる人の事を指します。

解の質を上げる訓練に特化した教育課程

ここで理解しておかなければならない重要なポイントがもう一つあります。
それは、我々は教育課程において、解の質を高める訓練は受けているものの、イシュー度の高い問題を見極める訓練はほとんど受けていないという事です。

イシュー度の高い問題を見極めるためには、課題の発見力・問題提起力が重要になります。周囲の環境をよく観察した上で、今最も重要な課題は何なのか、どの問題に取り組むべきなのかという事を考え抜く必要があります。

しかし、小学校から始まる教育課程では、常に課題は事前に設定されているものであり、我々はその解法だけを学びます。学校の勉強では、決められた問題を解き、家に帰ると与えられた宿題をやる。そして、特定の時期になると受験という課題が設定されており、それに取り組む。大学を卒業する頃にはまた、就職という課題が設定されているのでそれに取り組む。

幼い頃から我々は常に解くべき課題を提示されてきたため、課題を見極める力についてはほとんど訓練されていません。大学の研究などで、自らテーマを考えたという人はとても良い訓練の場になったと思いますが、多くの学生は、教授が考えたイシュー度の高い問題を割り当てられ、それを解く事に注力したでしょう。

解の質を上げる訓練を受けた事自体は悪い事ではないですが、変化の激しい、そもそも正解のない時代においては、課題や解くべき問題を見極め、それを提起する力がより重要になってきます。

価値のある仕事をするためには、「イシュー度の高い問題を見極める」→「解の質を上げる」という順番が必須ですが、イシュー度の高い問題を見極める訓練を受けていない我々は、イシュー度の見極めが甘く、イシュー度の低い問題に必死に取り組んでしまう。結果的にこれが生産性の低下に繋がって行きます。

生産性を上げるには、価値のある仕事をする必要があり、価値のある仕事をするためには、イシュー度の高い問題を見極める必要がある。しかし、解の質を上げる訓練に特化した教育を受けた我々は、イシューの見極めが甘いまま、解の質を上げる事に注力してしまいがちである。
この前提を念頭においた上で、「イシューは何か?」という事を口癖のように、常に意識する事が重要になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

当たり前のように使っているものの、実はその意味がよくわかっていない人が多い、「生産性の高さ」について説明しました。価値のない問題にどれだけ取り組んでも生産性は上がらず、まず、解くべき問題であるイシューの見極めが非常に重要になります。

生産性の高さについて少しでも参考になれば幸いです。