思考力を鍛える「仮説型質問」

はじめに

前回、質問の一つの型である「提案型質問」について書きましたが、今回はもう一つの質問の型である「仮説型質問」について書いていきます。

提案型質問は、仕事の進め方などを質問・確認する場合に有効ですが、単純に知らない事を質問する際など、提案の要素が入れられない場合には適用できません。しかし、こういった場面において、知らないからと単純に質問してしまうのではなく、仮説型質問を心掛ける事で自身の思考力を鍛えて行く事ができます。

日々の少しの意識で思考を磨く事ができる、「仮説型質問」について見て行きましょう。

仮説型質問とは

仮説型質問とは、単純な質問とは違い「仮説付きの質問」の事です。質問は質問なのですが、その人の一歩踏み込んだ仮説が入っています。

以下、簡単な例を見てみましょう。

■通常の質問

  • 「Aさんって何であの業界にあんなに詳しいんですか?」
  • 「うちの本社って何で○○にあるんですか?」
  • 「会議の最後で部長が△△をあえて念押ししたのって何でですかね?」

■仮説型質問

  • 「Aさんって何であの業界にあんなに詳しいんですか? 過去に出向の経験があるとか、もしくは中途入社ですかね?」
  • 「うちの本社って何で○○にあるんですか? 創業者の所縁の地とか、創業当時の主力製品の影響ですかね?」
  • 「会議の最後で部長が△△をあえて念押ししたのって何でですかね? 何か最近同じようなミスがあったんですかね?」

いかがでしょうか。単純な質問でも問題はないのですが、仮説型質問を心掛ける事で自分の中で「なぜ(Why)」の思考を回す事ができます。

気になったことに対して、その理由の仮説を自分で立ててみる。そしてその中から可能性が高いと思われる仮説を添えて質問してみる。これが仮説型質問の基本になります。

仮説型質問のメリット

仮説型質問は、自分の仮説が当たっても外れてもメリットがあります。

仮説が当たればよしで、質問相手に「鋭いね」と思ってもらえます。外れた場合も、自分の中で可能性が低いと思っていた仮説であれば、その理由を知る事で新たな気付きになります。更に、自分の仮説になかった想定外の理由で外れた場合、ある意味このケースの学びが一番大きく、自分の仮説構築の幅を広げて行く事ができます。

このように、単純な質問の場合は「知識」以上の学びはありませんが、仮説型質問の形にする事で、「仮説構築」と「検証」のサイクルを回し、思考力を鍛えて行く事ができます。

少し話を発展させると、この思考のサイクルは「直観力」を鍛える非常に良い訓練になります。
なぜなら、直観力は先天的にあるものではなく、これまでの経験と思考の積み重ねの結果がゼロ秒思考として後天的に体現されているものであるからです。

迅速な意思決定はある程度のポジションになれば必須であり、迅速な意思決定の質を高めるにはこの直観力を鍛える事が重要になります。提案型質問を心掛ける事で、日々の何気ない質問の場が、この直観力を鍛える良い訓練の場となります。

知らない事を「ググる」前にちょっと考えてみる

私達の生活に完全に馴染んだ「ググる」という行為。知らない事を調べるために必須の行為ですが、わからない事が出てきた時に、すぐにググって「そういう事か」で終わってしまうのは実は非常に勿体ない行為です。

ここまでの流れで気づいた方も多いと思いますが、「知らない事に出会う」という場面は、仮説思考を鍛える絶好の場であるため、いきなりググるのではなく、自分で仮説を立ててからググってみましょう。

自分なりの仮説を先に立て、その上でググった結果で答え合わせをする。こうする事で、日々の何気ない場面を仮説思考を鍛える場にして行く事ができます。

仮説を立てるのに、10分,20分とじっくり考える必要はなく、10秒~1分ぐらいで十分です。

ちょっとしたゲーム感覚で仮説を立てる事を楽しみつつ習慣化できれば、時間が経った時に、自分の思考の質が目に見えて高くなっている事を実感できます。

まとめ

単純な質問に知識以上の学びはありませんが、仮説型質問の形にする事で、自身の思考力を鍛えて行く事ができます。

あらゆる情報が手に入りやすい時代になったのは良い事ですが、その分、日常的に自分の頭を使って考える機会が減ってきているのではないかと思います。しかし、AIが更に進化していく中で、将来も機械に置き換えられないのは「思考力のある人」です。

いきなり聞いたり調べたりする前に、「少し自分で考えてみる」という事を是非習慣化し、思考力を鍛えて行きましょう。