コンサルティングファームが優秀な人材をどんどん昇格させる本当の理由

はじめに

前回、「なぜコンサルタントというキャリアはこれほど面白いのか」で、コンサルティングファームでは、30歳すぎのマネージャーが普通にいて、優秀な人であれば20代でマネージャーになる事もできると書きました。実際にコンサルティングファームでは、年齢に関係なく、優秀な人材はどんどん昇格させて行きます。

さすが実力主義だなと言いたいところですが、実はこの現象の本質はそこではなく、ポイントは、「そもそもコンサルティングファームと事業会社では、昇格に対して働く力学が異なる」という点にあります。そしてこれは、実力主義とは全く異なる側面になります。

事業会社出身の私自身、最初は感覚の違いに驚いた「なぜコンサルティングファームが優秀な人材をどんどん昇格させるのか」という事について解説して行きたいと思います。

コンサルティングファームが優秀な人材をどんどん昇格させる本当の理由

それでは、なぜコンサルティングファームは優秀な人材をどんどん昇格させるのでしょうか?

それは非常に単純な理由で、「社員を昇格させる事により、売上も利益も上がるから」です。事業会社にいる人達からすると、「昇格させるって事は給料も上がるわけだから、会社としてはコスト増なんじゃないの?」と思ってしまう所ですが、ポイントはビジネスモデルにあります。

コンサルティングファームにおける「商品」は何になるのでしょうか?
前回の記事でも記載した通り、それは「コンサルタント」、つまり働いている1人1人の社員になります。

そして、1人1人のコンサルタントは、アソシエイト/コンサルタント/シニアコンサルタント/マネージャーといった形で職位が決まっており、職位毎に単価(クライアントへの売値)のレンジが異なります。

もうお気づきかと思いますが、コンサルタントが昇格するという事は、そのコンサルタントの単価のレンジが上がるという事になり、会社目線で見ると、「自分達が売っている商品の売値が上がる」という事になります。そして、昇格による単価レンジの上昇に比べると、給与の上昇分は低く抑えられているため、売上だけでなく利益も上がります。

つまり、事業会社における社員の昇格はコスト増ですが、コンサルティングファームにおいては全く逆で、社員の昇格によって、会社の売上も利益も上がるのです。むしろ、上位職のスキルに達しているコンサルタントを低い職位に留めておくことは、本来高く売れる商品を安売りしている状態に等しいので、こういったケースではすぐに昇格させるという力学が働きます。

事業会社の場合、社員をどんどん昇格させてしまうと単純にコスト増になるため、おおよその年次の目安(各職位3-5年の経験)や、昇格要件が規定されており、これはどちらかというと昇格を抑制するための要件になります。

一方でコンサルティングファームの場合、優秀であれば1-2年で次の職位に上がる事もあり、昇格要件に基づいた具体的なスキル開発プランを立てるなど、会社自体がコンサルタントの昇格に非常に熱心です。なぜなら会社としても早くスキルをつけて昇格して欲しい(商品としての価値を上げて欲しい)からです。

ここで、別の観点でもう一つ重要なポイントがあります。それは、事業会社ではよくある「上が詰まっていて昇格できない」という事が、コンサルティングファームでは起きないという点です。

事業会社では、事業をやるに当たり、組織上のピラミッドが形成されます。ピラミッドの大きさによって、マネージャーなどの管理職のポスト数も当然決まっているため、現代の日本のような年齢構造の社会においては、スキル要件では上位職でも問題ない若手が、上が詰まっているために昇格できないという事がよく起こります。

一方コンサルティングファームでの論点は、「そのコンサルタントがどの単価でクライアントに買ってもらえるか?(それだけの価値があるか)」という事になります。自社で事業をやっている訳ではないので、ピラミッド構造を作る必要は事実上なく、仮に全員がマネージャーだったとしても、それぞれがマネージャーの単価で案件に入れる(クライアントに買ってもらえる)のであれば、全く問題ありません。ある意味、ポストは社内ではなく、社外にあるからです。

社内の限られたポストがなく、昇格によって商品としての価値も上がる。つまり、コンサルティングファームが年齢関係なく優秀な人材をどんどん昇格させるのは、もちろん実力主義という側面はあるものの、そもそものビジネスモデル上の違いが決定的に異なるポイントとなります。

では、「とにかく昇格させてしまえば良いのでは?」と言いたくなるところですが、昇格要件に達していればすぐに昇格できるものの、昇格判定自体が甘いという訳では決してありません。なぜなら、コンサルティングファームとして最も避けたいのは、クライアントにコンサルタントが買ってもらえないという事だからです。

つまり、仮に本来のスキルを上回る職位に昇格させて、無理矢理単価を上げた場合、本来の価値以上の値段を商品につけている事になるため、クライアントに買ってもらえないという状態になります。

クライアントに買ってもらえない(案件に参画できない)という事は、売上がゼロでそのコンサルタントの給料分が全てコストという状態になってしまいます。このように、安易に昇格させる事は会社にとっても大きなリスクであるため、誰でも簡単に昇格できるという訳では当然なく、次の職位でやっていけるスキルと経験を備えているかという事はしっかりと見られます。

ただし、そのスキルと経験を備えていれば、上が詰まっているというような事もなく、会社としても早く昇格して欲しいという力学は働いているので、実力主義で行きたい人にとっては非常に良い環境だと感じるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。
事業会社からコンサルティングファームに行き、もはやマネージャーしかいない部署があったりと、最初は驚いた事もあったのですが、そもそものビジネスモデル上の違いである事を理解した時、非常に興味深いなと感じました。

  • 上が詰まるという事がない
  • 会社としては早く昇格して欲しい

この2点が、コンサルティングファームでの昇格に関する大きな特徴(多くの事業会社との違い)であると言えます。