「やりたい事がない」と言う人の心理

はじめに

「やりたい事がない」「自分の好きな事が何かわからない」

友人や後輩達から時々キャリアの相談を受ける中で、最近特に多いなと感じるのがこの悩みです。
実際、キャリアに悩んでいる人達の中でも、この悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。

長く日本を支えた年功序列・終身雇用のモデルが崩れ、人生100年時代、会社に依存せず自分の力で生きて行く時代への変化が急速に進んでいます。今後もこの変化は、不可逆的に加速する一方でしょう。

こうした中で、これまでは会社や組織によって与えられていたため、あまり考える必要のなかった、各個人の「やりたい事」の重要性は高まる一方となっています。なぜなら、転職や副業、独立や起業にしても、そもそも自分のやりたい事がなければ何も始められないからです。

このように、各個人のやりたい事の重要性が改めて問われる時代になっているものの、そもそも自分は何がやりたいのかわからないと悩んでしまっている人も多いのが実情です。

ではなぜ自分の事なのに、やりたい事がわからないのでしょうか?

当人達はやりたい事がない(見つからない)という事に悩んでいるものの、よくよく話を聞いていくと、真の問題はやりたい事がないのではなく、別の点にある事がわかります。

そして、この点が解消されないために、どれだけ考えてもやりたい事が見つからないという状態を抜けられない形になってしまっています。

今回は、最近あまりにも悩んでいる人が多い、この「やりたい事がない」と言う人達がどういう心理なのかという点と、それを踏まえた解消方法について考えていきたいと思います。

やりたい事がないと言う人の心理

では、なぜやりたい事が見つけられないのでしょうか?

これを考えるためにはまず、「やりたい事とはつまり何なのか」という事を問い直す必要があります。

今回の文脈に沿う形で言い換えると、「やりたい事」とは以下を意味します。

「やりたい事」 = 「夢が叶うのであればやりたい事」 And 「自分にできると思っている事」

ベン図で書くと以下です。

「夢が叶うのであればやりたい事」とは、例えば、ドラゴンボールや魔法のランプが使えた場合にお願いしたい事になります。左側の白抜きの部分は「夢が叶うのであればやりたいけれど、自分にできるとは思っていない事」、右側の白抜きの自分は「自分にできるとは思っているけど、面白いとは思えない事」を意味します。

そして、「やりたい事がない」というのは、この2つの領域に重なる部分がない状態を指します。

つまり、夢が叶うのであればやりたい事の中に、自分にできると思える事がないという事です。

では逆に、やりたい事がたくさんある人がどういう状態なのかというと、やりたい事がたくさんあるとは、この2つの領域が大きく重なっている状態を指します。

もし夢が叶うのであればやりたいと思う事の中に、自分にできると思っている事がたくさんあるという事です。

つまり、やりたい事がないと言う人は、実はやりたい事自体がないのではなく、自分にできると思っていないのが真の問題だという事です。

何でも夢が叶えられるのであればやりたい事はあるものの、自分にできると思っていないので、どれだけ考えたところで自分のやりたい事は見つかりません。

逆の言い方をすると、自分にできると思っている範囲の中でやりたい事をなんとか探そうとするものの、その範囲内に面白いと思える事がないため、どれだけ考えてもやりたい事が出てこないという事です。

これはいわば、自己肯定感の問題であり、自己肯定感の高い人は、やりたい事が次々と溢れてくる一方で、自己肯定感の低い人は、やりたい事自体はあっても、自分にできるとは思えないため、結果的にやりたい事が見つからないという事です。

つまり、真に問うべき問いは「どうすれば自分のやりたい事が見つかるか?」ではなく、「どうすれば自分にできると思えるか?」という事になります。

これは自分の外側にある問題ではなく、自分の内側の問題であるため、ここが解消されない限り、どれだけ選択肢を考えても堂々巡りで前に進めない状態となります。

やりたい事がないという状態を抜け出す方法

それでは、このやりたい事がないという状態をどうやって抜け出せば良いのでしょうか?

アプローチとしては以下の2つがあります。

① 自己肯定感を少しずつ高めていく
② 全ては思い込みであるという事に気付く

① 自己肯定感を少しずつ高めて行く

こちらはイメージしやすいのではないでしょうか?

自己肯定感というのは、過去の実績に基づく自信によって創られるという面もあるため、少しずつ実績を積んで自己肯定感を高めていくという事です。

具体的には、自分にできると思っている事の中で難易度の高い事を少しずつクリアして行き、自分にできると思っている領域の中心を少しずつずらして行く形になります。

こうして自己肯定感を高めていった結果、何でも夢が叶うのであればやりたかった事が、自分にもできるかもしれないと思えるようになり、やりたい事が見つかるという事です。

こちらのアプローチは、土台をしっかり作っていく形になるので、一度築き上げると強固な自己肯定感が育まれます。

ただし、こちらは現状ベースからの積み上げ思考的なアプローチですので、そもそも論として考えていきたいのは次のアプローチです。

② 全ては思い込みであるという事に気付く

2つ目のアプローチは、全てが思い込みであるという事に気付くという事です。

これはメタ認知的な話になりますが、そもそも、自分にできると思っている事の範囲(=自分にはここまでしかできない)というのは、自分の中で勝手に作ってしまった思い込みでしかありません。

能力やスキルの問題に帰着してしまう人が多いのですが、例えば、その人の能力がそのままの状態だとしても、仮にスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような人達の性格をインストールできれば、自分にできると思っている範囲が非常に広いため、やりたい事はとめどなく溢れてくるでしょう。一方で、もっとネガティブな人の性格をインストールすれば、自分にできると思っている範囲が非常に狭いため、やりたい事は更に見つかりにくくなるでしょう。

つまり、自己肯定感というのもそもそも当人の思い込みでしかなく、自分にできると思うかできないと思うかは、その人がどう考えるか次第でしかないという事です。

ここで、陸上競技の非常に有名な話として、1マイル4分の壁を人類で初めて破った、ロジャー・バニスターの逸話を紹介したいと思います。
※1マイル=約1.6km

1950年頃の当時、1マイルを4分以内で走るということは、「スポーツ最高のゴール」「エベレスト登頂に匹敵する難しいもの」と言われ、医者や科学者からも、1マイル4分を切るのは、人間の能力では生理学的にも不可能と言われていました。

到底不可能と思われていた1マイル4分の壁ですが、1954年にバニスターが1マイル4分の壁をついに破る事になります。バニスターが凄いのはもちろんなのですが、この話の面白いところは、人類には到底不可能と言われてきたにも関わらず、バニスターが1マイル4分の壁を破ったその後3年間で、15人もの選手が1マイル4分を切る記録を出したという事です。

人間の身体能力が劇的に上がったというわけでは当然なく、バニスターの記録によって、1マイル4分は切れないという思い込みがなくなった途端、堰を切ったようにこれまで出なかったはずの記録を出す選手が続出しました。

このように、人間の脳は良い意味でも悪い意味でも思い込みに左右されやすいという面があるという事です。同じ能力であっても、自分にできないと思っていればまずできないですが、できると思い込んでいればできてしまうかもしれないという事です。

アプローチ1で、まず自分ができる範囲の事から実績を積んで自己肯定感を少しずつ高めて行くという話をしましたが、そもそもこの自分にできる範囲というのも思い込みでしかありません。

実際に、過去の偉人達の自伝を読んでみると、特に実績などまだない段階から、とてつもなく大きな目標を掲げている事に気付きます。何の根拠もなく、周りにはできるはずがないと笑われながらも、自分にはできると良い意味で思い込み、やりたい事を成し遂げたという事です。

つまり、自分ができると思っている範囲の中から少しずつ自己肯定感を高めていくというアプローチ1は、堅実であるように見えますが、自分が作った今の思い込みにむしろ縛られるアプローチとも言えます。

ありもしない制約を一旦外し、まずはできると思い込んでしまえば、自分のやりたい事が見えてくるのではないでしょうか。できるかどうかを考える時に特に根拠はいりません。

この点に関しては、小さな子供達を見ているととても勉強になります。
なぜなら子供達はやりたい事に溢れており、それは自分達には何でもできると思っているからです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

やりたい事がないという人の心理とその状態を抜け出す方法について書いてきました。

やりたい事がないとずっと悩んでいる人に、「もしドラゴンボールが使えたらどうする?」と聞いてみると、ほとんどの場合、もはやドラゴンボールでは足りない量の願いがたくさん出てきます。

つまり、やりたい事自体がないわけではなく、自分にできると思っていないのが本当の問題だという事です。

そもそも人間は成長していく生き物なので、今時点での能力やスキルがどうなのかというのは、言ってしまえばどうでも良い問題です。今時点がどうかという事より、ここからどれだけ成長できるかの方が重要だからです。

やりたい事が見つからないという人は、まずはいったん自分の思い込みである制約を外し、ゼロベースで自分が何をやりたいのかを考え、ではどうすればそれが実現できるのかという順番で思い切って考えてみるのが良いのではないかと思います。

最後におすすめの名言を3つ紹介したいと思います。

「あなたの能力に限界を加えるものは、ほかならぬあなた自身の思い込みなのです」 ナポレオン・ボナパルト
「インドへの航海の実行には、知性も数学も地図も活用しなかった」 クリストファー・コロンブス
「人生における大きな喜びは、君にはできないと世間が言うことをやってのけることである」 ウォルター・バジョット