パーキンソンの法則

はじめに

今回はシンプルかつ強力な「パーキンソンの法則」について書いていきます。

パーキンソンの法則は、目に見えない「人間の習性」にあたる法則であるため、一度内容を理解した人でさえ、なかなか意識し続ける事は難しく、気が付けば誰もがパーキンソンの法則の罠に陥ってしまっています。

しかし、「パーキンソンの法則に陥っていないか」という事を折に触れてチェックし、その対策を打てるようになれば、無駄な時間の発生を防ぐ事が出来ます。

ビジネスパーソンであれば必ず押さえておきたい、「パーキンソンの法則」について簡単に紹介していきます。

パーキンソンの法則とは?

パーキンソンの法則は、1958年にイギリスの歴史学者で政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソンが、著書『パーキンソンの法則:進歩の追求』で提唱した法則であり、以下の2つの法則からなります。

第1法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第2法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

これは要するに、「人は時間やお金があればあるだけ消費してしまう」という事を意味しています。

身近な例としては、
・あれだけ時間があったはずなのに、夏休みの宿題がなぜかいつもギリギリになってしまう(第一法則)
・収入が以前より増えたにも関わらず、なかなか貯金ができない(第二法則)

など、皆さんも経験があるのではないでしょうか。

ビジネスパーソンが特に気をつけておきたいのが第一法則であり、この第一法則はビジネスシーンの様々な場面で表れてきます。

パーキンソンの法則の具体例とその対策

パーキンソンの第一法則のポイントは時間的な余裕による「集中力の欠如」です。そしてその対策のポイントは、「意識的に締め切りを早める」事にあります。

それでは、よくある具体例とその対策について見て行きましょう。

<会議>

事例:なぜかいつも会議に1時間かかっている
→ 対策:会議の時間を30分で設定する

会議は最もパーキンソンの第一法則が顕著に出る場面です。とりあえず1時間で設定した会議は多くの場合、本来もっと早く終わるはずの内容であっても、多くの場合1時間消費してしまいます。それは、1時間使って良いという認識を無意識的に持ってしまうからです。1時間あるという余裕から、会議が緩やかに始まったものの、残り5分で急に慌ててラップアップに入った。こういう経験を皆さんも一度は持っているのではないでしょうか。

この場合の対策としては、会議を30分で設定してしまう事が有効です。「30分で会議を終わらせないと」という意識を持つ事で場に緊張感が生まれ、会議冒頭での目的の擦り合わせや論点整理、会議中のオープンディスカッションの回避、会議の終了に向けた早めにラップアップなどを意識するようになり、締まりのある会議ができます。

とはいえ、どうしても30分で終わらなかった時に、スケジュールの再調整が大変・・という場合は、1時間で枠だけ取っておき、会議の冒頭で「今日は念のため1時間取っていますが、30分で終わらせたいと思います」と言い切ってしまうのが効果的でしょう。実際に30分で終われば、そのまま終われば良いですし、30分で終わらなかったとしても1時間想定で最初から進めていた場合より、早く終わる可能性が高くなるでしょう。

<残業>

事例:残業が定常化してしまっている
→ 対策: 必ず帰る時刻をチームで決める

残業もパーキンソンの法則が顕著に出る場面であり、残業が定常化してしまうと残業を前提に仕事をするようになります。こうなると定時内の集中力が下がり、定時後の残業時間で一気に仕上げようとするため、仕事の質・生産性共に落ちて行ってしまいます。

対策としては、帰る時刻をチームで決めてしまうのが有効でしょう。会議の例と同様に、「今日はこの時刻には帰らないと行けない」という事を意識する事で、集中力を高める事が出来ます。

<タスク指示>

事例:部下が、指示したタスクをいつも締め切りギリギリに仕上げてくる
→ 対策例: 途中でチェックポイントを設ける

配下のメンバーなどにタスクを指示する場合、例えば「今日中にこれやっといて」といったような指示では、メンバーはなかなかエンジンがかからず、今日の終わりを意識した仕事の進め方をしてしまいます。

午後からようやく着手し始めて、見積もりが甘く、夕方ぐらいから焦り始め、ギリギリになってなんとか仕上げてくる。こういう事が常態化している場合の対策としては、「今日中にこれお願いしたいんだけど、午後一で一旦見せてくれる?」といった形での指示が有効でしょう。午後一で見せないと行けないといった緊張感により、午前から集中してタスクに取り掛かるようになります。更に午後一にチェックした際に、「この状態なら、ここを修正するだけだから今から1時間でお願いできるかな」という具体的な指示にする事で、高い集中力を保ってもらう事ができ、結果的に早く仕事が完了します。

行き過ぎるとマイクロマネジメントになるので注意が必要ですが、タスクの指示においては、パーキンソンの法則に注意し、適度なタスクの粒度での指示・チェックポイントを設けるなどの工夫で、高い集中力を持続してもらう事が重要になってきます。

まとめ

パーキンソンの法則は、シンプルでありながら強力な「人間の習性」であるため、
「私はやる気があるから大丈夫」「あの人は怠けがちだ」というような精神論で議論する性質の話ではない事を理解しておく事が重要です。

当人が優秀であるかどうかに関わらず、パーキンソンの法則は発現するため、パーキンソンの法則が発生しないような「仕組み作り」を行う事が最も重要になります。

時間をいたずらに消費してしまうパーキンソンの法則を仕組みによって回避し、高い集中力で仕事に取り組める環境を作って行きましょう。