積み上げ思考と逆算思考

今回は、ビジネスにおいても、自身のキャリアや将来を考える上でも非常に役に立つ、「積み上げ思考」と「逆算思考」について紹介して行きます。世の中の多くの人が無意識的に積み上げ思考で動いていますが、逆算思考を身に付ける事で、以下のような効果が得られます。

<逆算思考で得られる主な効果>

  • 自分が将来辿り着く目的地を自分で選べる
  • 周囲の環境に依存せず成長して行ける
  • 目標の達成確率が著しく上がる
  • 行動に迷いがなくなる
  • そもそも毎日が楽しくなる

それではそれぞれの思考方法を見て行きましょう。

積み上げ思考とは

積み上げ思考とは、「ゴール(未来)を明確に描くことなく、今出来る事を精一杯やる。その積み重ねの結果がゴールとなる」という思考方法です。積み上げ思考は、身の丈に合った思考方法であり堅実的と言えます。

積み上げ思考の例としては以下のようなものがあります。

  • 毎日部活の練習を頑張った。結果的に市の大会で優勝し、県大会まで出場する事が出来た。
  • 高校で出される宿題やテスト勉強を頑張った。結果的にその高校では上位層である○○大学に合格できた。
  • 会社で与えられた仕事を精一杯こなした。結果的に、年末の評価で上司から良い評価をもらえ、ボーナスが〇%上がった。

どうでしょうか。実際かなりの人が積み上げ思考型である事がわかるのではないでしょうか。積み上げ思考は一見頑張っているように見えるのですが、厳しい言い方をすると、「自分自身ときちんと向き合って目標を設定する事をやめ、努力自体を美徳化する思考法」とも言えるでしょう。なぜ多くの人はこの思考法を選ぶのでしょうか?それは、単純に楽だからです。周囲が決めてくれた目標や基準に沿って、頑張れば良いだけなので、基本的にあまり考える必要はありません。状況によっては効率的な場合もあるものの、この思考法には大きく2つの欠点があります。

積み上げ思考の欠点

積み上げ思考には大きく以下2つの欠点があります。

  • 自分の辿り着けるレベルが、周囲の環境によって決定される
  • 5年後, 10年後に振り返った時に、大きな虚無感と焦燥感に襲われる可能性がある

1つ目の欠点ですが、積み上げ思考における「精一杯頑張る」の「精一杯」とは何を指すでしょうか。それは自分のいる環境の平均を満たすレベルかその少し上辺りを指します。その環境では頑張っていると見なされる事も、他の環境に行けば頑張っていないと見なされる事もありますが、積み上げ思考で頑張る人はあくまでその環境の中での頑張りを基準にするため、その環境のレベルを大きく超える事はありません。「収まる所に収まる思考法」とも言え、本来もっと高いレベルに行けた人でも、いつの間にかその環境で良しとされるレベルに収まってしまうため、非常に勿体ない思考法とも言えるでしょう。

2つ目の欠点ですが、積み上げ思考の人は、実は自分が積み上げ思考であるという事に気付いていません。日々自分なりに一生懸命頑張り、周囲からも褒められるため、それが良い事だと思ってきたものの、5年・10年と月日が経ったある日、多くは昔の友人が大きく成功している事を知った時に、「自分は何をやっていたんだろうか?」「自分の人生は果たしてこのままで良いのだろうか?」「本当に自分がやりたい事は何なのだろうか?」と突如我に返る瞬間があり、これまでの自分への大きな虚無感と将来への焦燥感に襲われてしまう場合があります。しかし、これまで自分で目標を立てたり、自分と向き合う訓練を積んできてはおらず、言わば、成り行き任せに慣れてしまっているため、なかなかすぐには動き出せません。
こういった事態を避けるために、逆算思考を見て行きましょう。

逆算思考とは

逆算思考とは、「ゴール(未来)を先に想定して、そこに到達するために今やるべきことは何か、どのように進めて行くかを逆算してプランを考える」という思考方法です。成功者と言われる人のほとんどがこの逆算思考で動いています。

積み上げ思考の例の対比として、逆算思考の例を挙げると以下のようなものになります。

  • 入部時点で全国大会出場を目標とし、全国大会出場に求められるレベルを基準に練習や自主練習に取り組んだ。
  • 高校入学と同時に東大合格を目標とし、必要となる教科や範囲、基準点から逆算して勉強や模試の計画を立てた。
  • 3年経ったら起業すると決め、起業に求められるスキルから逆算して、今の仕事から身に着けられるスキルは全て学びつつ、足りないスキルは業務外の時間で補填した。

どうでしょうか。積み上げ思考と違って、その環境の基準を気にしている場合ではない事がわかるのではないでしょうか。例えば1つ目の場合は、全国大会出場を目標としているのに、チームが弱小校の場合、もはや顧問の先生に言われた事を頑張っている場合ではありません。強豪校のスカウティングや調査を通して、顧問の先生を説得して練習メニュー自体を今すぐ変えて行く必要があるでしょう。

逆算思考の良い所は、目標を決めた時点で頭がその目標に切り替わり、普段の行動が全て変わって行く事です。逆算思考を持つ事で、自分のいる環境に依存する事なく、大きく飛躍して成長して行く事ができます。また、自分自身で目標を設定してそのために努力をしている、自分で主体的に人生を選択している状態であり、納得感のある人生を送る事ができます。仮にその目標が達成できなかったとしても、その行為自体を後悔するという事はほとんどないでしょう。人が大きな後悔の念を抱くのは、「やれなかった」時ではなく、「やらなかった」時だからです。いずれにしてもその目標に近いレベルには到達している事が多いため、積み上げ思考の人達とは既に、埋まる事のない差がついている事でしょう。

生き生きと自分の人生を楽しんでいる人の多くは逆算思考の人です。もちろん積み上げ思考自体が悪いという訳ではなく、積み上げ思考と逆算思考をそれぞれ理解した上で、主体的に積み上げ思考を選択するのも一つの考え方です。

自分は果たして積み上げ思考なのか、それとも逆算思考なのか一度考えてみるのも良いのではないでしょうか。