未経験からコンサルに転職する場合、必ず頭に入れておくべき事
はじめに
「なぜコンサルタントというキャリアはこれほど面白いのか」で、コンサルタントというキャリアを選ぶ面白さについて書きました。
コンサルタントというキャリアは、合う人には非常にオススメであるのですが、今回は一方で、実際にコンサルティングファームに転職するのであれば、必ず頭に入れておくべき事について書いて行きたいと思います。
なぜこれを頭に入れておくべきかというと、コンサル未経験から思いきってコンサルに転職したものの、思うように仕事が上手く行かず、最初の数ヶ月で精神を病んでしまい、そのまま休職に入ってしまうような人が相当数いるからです。
今回の内容を意識として先に持っておくと、仕事が上手く行かず、自分を追い詰めてしまいそうな時に、思考の逃げ道として大きな助けになります。多くのコンサル未経験の人はこの意識がない事で、必要以上に自分を追い詰め、そのまま精神を病んでしまうという事が往々にしてあり、私自身多くの実例を見てきました。
今回は、思考のセーフティネットとして、未経験からコンサルに転職する場合に、必ず頭に入れておいた方が良い事について書いて行きたいと思います。
未経験からコンサルに転職する場合、必ず頭に入れておくべき事
それでは、未経験からコンサルに転職する場合に、必ず頭に入れておくべき事は何かというと、それは「プロジェクトで活躍できるかどうかはほぼ運である」という事です。
コンサル未経験から転職したものの、最初のプロジェクトで上手く行かず、そのまま精神を病んでしまう人の典型的なパターンは以下のような形になります。
「思い切ってコンサルに転身(自分がコンサルとしてやっていけるのか非常にドキドキしている)」
↓ 最初のプロジェクトアサインが決まる
「(実力主義だと聞いているので)とにかくこのプロジェクトでキャッチアップ・活躍して、自分のコンサルとしての資質を証明しないと。。」
↓ プロジェクトで試行錯誤するもののなかなか上手く行かない
「怒られてばかりで全然役に立てていない。もしかして自分はコンサルに向いていなかったのだろうか。。」
↓ 更に試行錯誤するもののそれでも上手く行かない
「自分はコンサルに向いていなかったという事か。。転職しない方が良かったのかもしれない。。」
↓ もはやまともな思考が難しい状態に陥り、更に悪循環
精神を病んでしまい、休職
どちらかというと、いわゆる優秀で真面目な人ほどこのケースに陥ってしまう事が多く、ここでの問題は、自分がたまたま最初に入ったプロジェクトの事例を極端に汎化してしまっているという事です。
つまり、最初のプロジェクトで活躍できたか活躍できなかったかをそのまま、「自分がコンサルタントとしての資質があるかないか」に結びつけてしまっているのですが、プロジェクトで活躍できるかどうかは運の要素が強いとすると、これは偶発性の高い状況において、1つのサンプルで帰納法を使っているような状態で、かなり無理があると言えます。
コンサル未経験の人にとっては、最初のプロジェクトが自分にとってのコンサルの世界の全ての状態であり、比較材料がないため、このように判断してしまうのもある種無理がないと言えます。
しかし、あるプロジェクトで全く使い物にならなかったコンサルタントが別のプロジェクトで見違える程活躍したり、逆に、非常に優秀で社内でも有名だったコンサルタントが、別のプロジェクトで全くワークせず、精神を病んでしまったりという事も実際によくある話です。
つまり、プロジェクトで活躍できるかはコンサルタントの資質や力量以前に、前提として運の要素が強いという側面があり、その側面を先に頭に入れておく事は、特にコンサル未経験の人達にとっては、精神衛生上の面でも非常に重要と言えます。
では、プロジェクトで活躍できるかどうかはなぜ運の要素が強いと言えるのでしょうか?
その理由は、個々のプロジェクトには大きく以下の5つの変数があり、その変動性が非常に大きいからです。
■個々のプロジェクトが持つ5つの変数
- プロジェクトマネージャーとの相性
- クライアントとの相性
- 社内でのプロジェクトの位置付け
- クライアント側におけるプロジェクトの位置付け
- プロジェクトと自分とのスキルの相性
以下、それぞれ個別に解説して行きます。
1.プロジェクトマネージャーとの相性
5つの変数の内、ある種最も大きいと言えるのが、この「プロジェクトマネージャーとの相性」になります。未経験の人が最も陥りやすい罠でもあるため、少し長めに解説して行きます。
事業会社との大きな違いとして、コンサルティングファームはいわゆるピラミッド構造で日々仕事を回しているのではなく、プロジェクトマネージャーを中心とした個別の部隊がそれぞれクライアントのプロジェクトに取り組んでいます。
つまり、プロジェクトマネージャーが更にその上位職(シニアマネージャーやディレクター、パートナー)に日々伺いを立てながら仕事を進めているというわけではなく、プロジェクトマネージャーの上位職は何か問題があれば出てくるといったスタンスであるため、プロジェクトマネージャーはそのプロジェクトにおいて非常に強い権限を持っているという事です。
いわばプロジェクトマネージャーは、プロジェクトにおける王様のような存在であると言えます。それゆえにプロジェクトマネージャーとの相性が悪いというのは、相性の悪いトップがいるベンチャー企業で働くようなもので、自分のパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
プロジェクトマネージャーと言っても当然人間であるため、左脳型・右脳型、マイクロマネジメント型・放任型、正確性重視・スピード重視など十人十色であり、一緒に仕事をする上では、これは良し悪しというより単純に相性の問題になります。
またバックグラウンドという意味でも、理系なのか文系なのか、新卒からコンサルなのか中途入社なのか、事業会社出身だとしても、製造業なのか金融系なのか、IT系出身なのかなど、自分と似たバックグランドを持っているのかなども大きく仕事のやりやすさに直結してきます。
私自身エンジニアとしてのバックグラウンドがあったため、同じくエンジニアリングのバックグラウンドや理解があるプロジェクトマネージャーとそうでないプロジェクトマネージャーでは、仕事におけるストレスやパフォーマンスに雲泥の差が出ました。
結局お互いに人間であるため、自分が優秀であろうと、相性の悪い上司とは上手く仕事が進みませんし、自分が優秀でなくても、相性の良い上司だったら自分の実力以上の力を引き出してくれる事もあります。
言われてみれば当たり前の事なのですが、コンサル未経験者の場合、この最初に当たったプロジェクトマネージャーを「コンサルタントとしてのお手本」と見立ててしまい、あまりにも強く影響を受けてしまいます。
最悪な、そして実際よくあるケースが、自分と相性の悪いプロジェクトマネージャーに当たってしまい、日々叱責される中で、それをそのまま「自分はコンサルに向いていないのではないか(資質がないのではないか)」という事に結びつけてしまうケースです。
コンサルの人達は、良くも悪くも優秀で自分の仕事にプライドを持っている人が多く、人材の流動性の高さからも、丁寧に時間をかけて育てるといった事は基本的にないので、「自分はコンサルとしてやっていけるだろうか。。」と精神状態がまだ不安定な状態のコンサル未経験の人達にとって、コンサルのお手本として見立てたプロジェクトマネージャーから、厳しい叱責を日々受ける事はかなりのストレスとなります。
指摘されている事が自分の腑に落ちるケースだと良いのですが、相性の悪いプロジェクトマネージャーの場合、何がダメなのか正直よくわからず、何をやっても空回りというケースに陥る事もあり、直接口に出すような事はないものの「君はコンサルに向いてないんじゃないか」という事が空気感から明らかに伝わるようになります。
しかし、コンサルとしての仕事の進め方やスタイルは人それぞれでそもそも正解はなく、そのプロジェクトマネージャーにとってはダメに映ったとしても、それはあくまで相対評価であり、それイコール、自分がコンサルとして絶対的にダメという事にはなりません。
それをそのまま自己評価に結び付けてしまうのではなく、あくまでコンサルタントの参考事例の1つとして、学べるところは全て学び取ろうぐらいのスタンスが本来ちょうど良いでしょう。
自分のスキル不足の面は当然あり、そこは全力でキャッチアップすべきですが、相性の問題は当然あるため、どうしても仕事が上手く進められないなと感じたら、プロジェクトを変えて欲しいと打診した方が双方に取っても良いでしょう。
「この人の下で上手くワークできていないという事は、自分はコンサルタントに向いてないのだろうか。。」とたまたま最初に当たったプロジェクトマネージャーの下で拡大解釈をする必要は何もありません。次のプロジェクトで頑張れば良いだけです。
自分と相性の悪いプロジェクトマネージャーに当たるのが最悪のケースと書きましたが、実は絶対に避けたい更にひどいケースがあるため、そちらについても触れておきます。
更にひどいケースとは、自分との相性以前に、プロジェクトマネージャー自体が社内でも嫌煙されている人のケースです。
このケースも2つのタイプに分かれ、1つ目が「そもそも問題児扱いされているケース」、2つ目が「単純に仕事ができないケース」です。
1つ目の「そもそも問題児扱いされているケース」ですが、これはわかりやすく、いわゆるパワハラ上司のようなケースです。過去に同じプロジェクトに入った若手コンサルが精神を病んだり、すぐに抜けたいというケースが多発していたり、クライアントともいつも問題を起こしていて、上司職のシニアマネージャーやディレクター・パートナーすら手を焼いているケースです。
2つ目の「単純に仕事が出来ないケース」ですが、これはマネージャーとして中途採用で入ったケースでしばしばあり(特にリファラル採用で入った人)、単純にコンサルティングファームのマネージャーとしてのスキルが足りないケースです。そもそもコンサルタントとして学ぶ所もなく、クライアントの期待値コントロールも下手なので、プロジェクトはもれなく炎上します。
コンサル未経験の人達がなぜ特にこのような人達に注意が必要かと言うと、非常に単純な理由で、こういう人達はコンサル未経験の人達を狙っているからです。
どういう事かと言うと、社内では自分にマイナスな噂が既に流れているので、誰も自分と同じプロジェクトに入ってくれないからです。
つまり、自分に対してネガティブなイメージがまだない転職したての人、更に、コンサル経験者の場合はすぐに自分の実態がバレてしまうため、コンサル未経験者が最も都合が良いという事です。
このようにして、問題のあるプロジェクトマネージャーは、転職したてのコンサル未経験者を囲い込もうとします。しかし、根本的な原因である自分自身を改善しようとはしないため、結果的に、囲い込んだ人材が精神を病んでしまう、全くワークしないというような事を繰り返します。
ここである程度コンサル経験があれば、「このプロジェクトマネージャーはやばいな」と客観的に判断できるのですが、コンサル未経験者の場合は比較材料がないために「自分にコンサルとしての資質がないのではないか・・」とむしろ自分を責めてしまうケースが多いという事です。
これが最も悲しいケースなのですが、残念ながらこの事例がないコンサルファームは大手であればほぼないと言って良いでしょう。コンサルファームのランクが高いほど、こういった人との遭遇率は下がるのですが、一定規模以上の組織には、残念ながらどの組織にもこういった人はいるものです。
ではこういった人達を避けるにはどうすれば良いのでしょうか?
対策としては非常にシンプルで、「次のプロジェクトのプロジェクトマネージャーこの人なんですけど、どういう人ですか?」とその人と過去に同じプロジェクトに入った事のある人を4-5人捕まえて聞いてみると良いでしょう。
あくまで相性の話はあるので、良い評価や悪い評価は色々返ってくると思いますが、明らかに悪い評価が多かったり、「あの人と同じプロジェクトには2度と入りたくない」という声が出てくるようであれば、少なくともそういった心積もりはしてプロジェクトに望んだ方が良いでしょう。
ある程度プロジェクトの経験を積むと、こういったいわゆる「やばい人」や「どうしても相性の悪い人」にはどの道一度は当たるのですが、運が悪ければ、それが転職一発目で来る事もあります。
こうなった場合に、自分のコンサルのとしての資質に原因を求めるような拡大解釈はしないよう、自分にとって良いプロジェクトマネージャーに当たるのも、そうでないケースも基本は運であるという事は頭に入れておいた方が良いでしょう。
2.クライアントとの相性
2つ目の変数は「クライアントとの相性」になります。
これは1つ目のプロジェクトマネージャーとの相性と同じ話が、クライアントに対してもあるという事になります。仮にプロジェクトマネージャーとの相性が抜群に良かったとして、クライアントとどうしても馬が合わず、パフォーマンスが発揮できないというケースも多くあります。
ある程度の失敗は覚悟しながらも試行錯誤でガンガン進めて行きたいタイプ、とにかく慎重を期して石橋を何度も叩いてからでないと具体的な施策を進めたくないタイプなど、こちらもクライアントによって大きく異なり、自分の強みがスピード感であるなら、慎重に仕事を進めたいクライアントにとってはそれが弱みになりますし、逆に自分の強みがきちっと仕事を進める事であるなら、スピード感を持って仕事を進めたいクライアントにとっては弱みになります。
つまり、クライアントから見た自分の仕事ぶりに対する評価も、クライアントとの相性による所が大きいため、たまたま最初にアサインされたクライアント先での評価を拡大解釈して、自分のコンサルタントとしての資質へ繋げて考える事も、ある種極端だと言えるでしょう。
同じプロジェクトであっても、クライアント側のキーパーソンが変わった瞬間に、水を得た魚のように一気に活躍し始めたというのもよくある事ですし、逆に、たまたま最初のプロジェクトで抜群に相性の良いクライアントに当たり、「自分はコンサルに向いてる!」と自信満々であったとしても、次のクライアント先で撃沈して、大きく自信を失うというケースもよくあります。
結局は人間同士なので、クライアントに対しても、相性の問題は当然あるという事です。ここも必要以上に拡大解釈して、自分を責めるようなことはせず、運の要素が強いという事を頭に入れておく事は重要であると言えるでしょう。
3.社内でのプロジェクトの位置付け
3つ目は、「社内でのプロジェクトの位置付け」という変数です。
これも未経験者がいきなりイメージするのは難しいのですが、あるプロジェクトで自分が活躍できるか、パフォーマンスが評価されるかは、そのプロジェクトが社内(コンサルティングファーム側)でどういう位置付けかという事がかなり重要であるというい事です。
具体的に言うと、各プロジェクト(案件)には以下のような種類があります。
- パートナーやディレクター陣も注目している注力案件
- 注力案件ではないものの、今後も維持したい案件
- 社内としてもうクローズしてしまいたい案件
- かなり無理難題をふっかけられている新規案件
- 炎上中の案件
比較的活躍しやすいのは1と2になります。1の場合、社内のサポートも手厚く、エース級の人材も投入されている事が多いので、それだけ学びも大きく、活躍できる機会も多いでしょう。
2のケースは、それほど注力案件ではないものの、案件自体は安定している(クライアントと良好な関係が保てている)事が多いので、コンサル未経験で最初に入る案件としてはかなり狙い目と言えます。
1に比べても、プロジェクトとしての安定度が高いので、色々とチャレンジする機会をもらえたり、地に足をつけてコンサルタントとしてのいろはを先輩から学ぶには最適な機会とも言えます。
そして、3-5が避けるべき案件になります。
まず3は、クライアント側に問題があるケースや、売上が非常に小さく、今後の拡大も見込めないケースなど、社内としてはもう早くクローズしてしまいたいケースです。
このタイプのプロジェクトでどれだけ頑張っても、社内としてはもう終わらせるプロジェクトという認識なので、あまり注目されておらず、チームのメンバーも次のプロジェクトの事を考えていたりします。
このような案件では、クライアントとの関係性を保つために若手だけ一人残すような事もあるのですが、コンサルとしての自分の軸が出来ていない状態だと、周りに学ぶ人がおらず、今までのスキルの延長で頑張ってしまう事になります。
いわゆるクライアント先の社員のような形となってしまうため、若手の頃は避けておいた方が良いでしょう。
実際、コンサルファーム出身の転職者で「ほんとにコンサル出身か?」と明らかに仕事が出来なかった人達は、概ねこういったタイプの案件に長く参画していた人達でした。
続いて4は、クライアントとの関係を構築するために無理矢理提取りに行った案件や、クライアントとの関係上、断り切れなかったような案件になります。
スケジュールやプランにそもそもかなり無理がある上に、優秀な人材が投入できないケースなど、敗色濃厚の案件で、ある程度経験を積んだ後であれば学びも大きいといえば大きいのですが、未経験からいきなりの場合は避けた方が良いでしょう。
キツいけどだからこそ学びのある案件という性質ではなく、とにかくギリギリのクオリティでなんとか間に合わせる事を自転車操業的に続ける事になるので、それなりに根性はつくかもしれませんが、コンサルタントとしての学びがあるかというとあまりないでしょう。
最も避けるべきは、5の既に炎上中の案件です。これはもうクライアントとの関係も最悪の状態で、チームメンバーも疲弊しきっている状態のため、未経験の人間がどうこうできる状態ではありません。先輩に色々と教えを請える状態でもないため、雑用的な事をひたすら任せられるのが関の山で、深夜まで働くような事もあるでしょう。
こうした案件にいきなり入って精神を病んでしまい「もうコンサルは2度とやりたくない」「自分はコンサルに向いていなかった」と言っている人もよくいますが、それはたまたまそういう案件だったという話で、コンサルどうこうの話ではありません。
このように案件の種別もプロジェクトによりけりであるため、最初のプロジェクトでどうだったかという事を必要以上に気にする必要はありません。
もう社内としてはクローズしたい案件でかなり頑張った人より、注力案件でそこそこ頑張った人のほうが評価されるというのもよくある事で、後者の方がコンサルタントとして優秀であるという訳では当然ありません。
4.クライアントにおけるプロジェクトの位置付け
4つ目は、「クライアント側におけるプロジェクトの位置付け」という変数になります。
これは、3つ目と同じ事がクライアント側においてもあるという事です。
クライアント側としても、そのプロジェクトが注力プロジェクトなのか、もう終わらせたいと思っているプロジェクトなのか、単なる予算消化プロジェクトなのかといったように、プロジェクト毎に位置付けは大きく異なり、非常に大きな要素として効いてきます。
例えば、予算消化のようなプロジェクトで、なるべく穏便に進めたいクライアントに対して、どれだけ息を吐いて抜本的な提案を繰り返してもあまり意味がありません。
精緻な分析や説得力のある提案をぶつけたとしても、暖簾に腕押し状態でしょう。それはコンサルとしての腕がないのではなく、そもそもそれが求められている状態ではないからです。
このようにプロジェクトが上手く行くか、その中で自分を高める事ができるかは、クライアント側のスタンスにおける要素が大きいため、自分が思い描いていたような成果が出せなかったとしてもある意味仕方のない事です。
クライアントがフルコミットしてくれるケース、なかなか捕まらず、定例会議にすらほとんど出てくれないケースなど、クライアントのコミット度合いもプロジェクトによりけりなので、この点も大きな変動要素である事を認識しておく必要があります。
強いて言えば、クライアントの熱量がそもそも低いプロジェクトはなるべく避けた方が良いでしょう。クライアント側のコミットがないプロジェクトで、良いプロジェクトになる事はなく、良い成果が出せるはずもないためです。
5.プロジェクトと自分のスキルとの相性
最後に、これは非常にわかりやすい変数だと思いますが、「プロジェクトと自分のスキルとの相性」という変数です。
例えばIT系のプロジェクトの場合でも、エンジニアとある程度プログラムのレベルで会話できる事が非常に強みになるケース、場合によっては自分でプログラミングすら一部やってしまう事がとてつもなく評価されるケースもあれば、細かいITスキルは不要で、とにかく全体を上手くマネジメント、コミュニケーションを円滑にすることが求められるケースなど、プロジェクトによって求められるスキルも大きく異なります。
コンサルになったのに、SIerの頃とほとんどやっている事が変わらなかったり、ITコンサルのはずが、ほぼほぼ業務系の事を求められたりと言う事も往々にしてある上、同じプロジェクトでもフェーズによって、求められるスキルも変容して行きます。
つまり、プロジェクトにおいて活躍できるかは、そのプロジェクトでそのタイミングで求められるスキルと自分のスキル(得意な事)がいかにハマるかが大きなポイントとなるので、これもタイミングを含めた運の要素が非常に強いと言えます。
既に何度も記載していますが、あるプロジェクトで全くワークしなかった人がプロジェクトを変えた途端に一気に活躍したり、優秀と言われていた人が逆に全く活躍しなくなったりいうケースは日常茶飯事であり、これもコンサルタントとして優秀かどうかではなく、そのプロジェクト・そのタイミングでは良かった、ダメだったというだけの話になります。
それでは、ここまでの話を再度振り返りたいと思います。
つまり、個々のプロジェクトには、「1.プロジェクトマネージャーとの相性」「2.クライアントとの相性」「3.社内でのプロジェクトの位置付け」「4.クライアント側でのプロジェクトの位置付け」「5.プロジェクトと自分のスキルとの相性」の5つの変数が効いてくるという事です。
コンサル未経験で、最初にアサインされたプロジェクトで上手く行かなかったとして「自分はコンサルに向いていないのだろうか」と拡大解釈してしまう事、更には精神的に自分を追い詰めてしまう事がどれだけ時期早尚な事であるか、おわかり頂けたのではないでしょうか。
実際「自分はコンサルに向いてないんですかね。。」と息を詰めたように若手に相談され、話を聞いてみると、明らかにプロジェクトマネージャーに問題があるケースや、クライアント側に問題があるケース、案件の内容に問題があるケースや、本人のスキルとあまりにもミスマッチなケースなどが少なからずあります。
その辺りを率直にフィードバックすると、全て自分の資質の問題だと思っていたのか、精神的にかなりまいっていた状態から大きく肩をなでおろすといったケースも多くありました。
コンサル未経験で転職した人達は、なかなか周りに相談できる人もまだいない状態である事も多く、プロジェクト間のメンバーの交流も基本的に多くはないため、孤立してしまいがちです。
更に、自分が上手くワークしていないと感じていると、それほど親しくない人達に思い切って相談する事も難しく、更にこの孤立が加速してしまうでしょう。
こうして、周りに上手く相談する事もできず、拡大解釈による自責思考で自分で自分を潰してしまう人も多いため、「プロジェクトで活躍できるかはほぼ運である」という事を思考のセーフティネットとして頭の片隅に置いておく事は、非常に重要であると言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
コンサルというキャリアはオススメであるものの、未経験から転職する場合は特に、自分を守るためにここだけは頭に入れておいて欲しいなという事、「プロジェクトで活躍できるかはほぼ運である」という事について紹介しました。
ちなみに当然ですが、これは他責思考になれという事ではありません。
「自分が活躍できないのは周りのせいだ」と考えるべきという訳ではなく、むしろ逆で「こういった大きな変動要素を抱えた中でどうやって成功確率を高めて行くか」と考える事が正しいスタンスであり、コンサルとしての腕の見せ所になります。
ただ、精神的にどうしてもきつい時には、「こういうものだ」と割りきれる状態にしておく事も同様に重要であるため、この意識を頭の片隅の置いておき、いざとなったら出せる状態にしておく事で、自分を守れる状態にしておいて欲しいと思います。